海外へワーキングホリデーの人や働けるビザも一緒にもつ留学生たちがアルバイトをするとき、もっとも多い仕事が飲食店での勤務です。
わたし自身、カナダに最初ワーキングホリデーで来て、コーププログラムで学生ビザと就労ビザに切り替えて滞在していた約3年の間カナダのレストランで働いていました。
レストラン業務は世界共通で想像しやすいのですが、呼称や切り分けが日本とは少し違っています。
履歴書(レジュメ)を持って行くときに、希望はフロントとは書いてたものの、
”どこのポジションが希望?”
って言われて
”ん???”
ってなってました。
日本だと、ホール(表)、キッチン(裏)の大きく2つに別れていますが、カナダではさらに細分化されていて、ポジションによって役割も明確に分担されています。
ここでは一般的な飲食店のポジションとそれぞれの業務や特徴を英語の学習という視点と絡めながら紹介したいと思います。
これから現地のレストランで働いて語学力も伸ばしたい、どのポジションが自分に合うかわからないと思っている人はぜひ参考にしてみてくださいね。
ホール(表)
サーバー
担当テーブルの責任者です。お客さんは基本的にサーバーに接客されます。
【求められる能力】
- 忙しくても自分で解決できる英語力
- 現地情報への精通
- アレルギー対応のための、料理の原材料把握
- 常連さんの好みを知る
持ちテーブルに案内されたら、飲み物のオーダーやメニューの説明、そして注文を取ってお客さんの料理がテーブルに届いているかを確認します。
この一連の流れがうまく運ぶことは大前提で、そこにお客さんに応じた適度な会話や情報を提供できるかでチップが変わってきます。
私が働いていた地域で5本の指に入る忙しい中規模の広さの店では、
- サーバー1人に対して1組平均4人が5テーブル
- ベテランのサーバーでも7〜8テーブル
が一度に担当できる限界といったところでした。
バッサー
サーバーアシスタントとも言われます。サーバーのサポートやテーブルセットの担当者です。
【求められる能力】
- 迅速かつ臨機応変な判断と行動力
- お客さんの些細な要望への察知
- お店全体を俯瞰する視点
- 強靭的な体力とスタミナ
実は一番業務範囲が広いかもしれません。
小さめのレストランでサーバーアシスタントとして働いたときは、注文をとる以外全てが業務範囲になるレストランもありました。
このポジションでは空いたテーブルを片付けたり、次の予約時間に合わせて人数分をセットするのが最優先です。
なんせお客さんを回転させなきゃいけないですからね。
さらには食べ終わったお皿を下げて、お水や中間ステーションの補充もします。
基本的に広範囲を見るため、常に目を光らせて1歩先を読んだ動きが必要になります。
一つのことをしながら次の動きを常に考えてたので、むちゃくちゃ忙しかったです。
またお店によってはお皿やグラスが重かったり、バスパン(プラスチックの大型トレイ)に団体の食器をまとめて入れて運んだりするので、体力も要領良くこなすことも要求されます。
バッサーとサーバーの違いを知らないお客さんもいる
お客さんからすると、バッサーもサーバーと同じようにホールを動いているので勘違いして注文してくる人もいます。
これが結構難しいところで、サーバーによっては注文を取ってくるのを嫌がる人もいるんですよね。
これには理由があって、
- お会計を個別で出す可能性があるから誰が頼んだかわかってなきゃいけない
- そもそも頼んでないと言われる可能性を防ぎたい
- 自分の担当テーブルには自分で責任を持ちたい
っていうことがあげられます。
最初は分からず言われたままをサーバーに伝えてましたが、自分がサーバーになってからわかりました。
サーバーがお客さんに再度確認に行くことは二度手間だし、とっくに注文したとお客さんが思い込んだオーダーは通ってないしと不満につながりやすくなるんです。
これはお店のスタイルによって注文を受けていいかどうかも変わってくるので、サーバーに事前に確認したり、"追加注文だったらサーバー呼ぶよ?" とお客さんに伝えるのがスマートな対応だと思います。
ドリンクランナー・フードランナー
出来上がったドリンクやフードをテーブルへ運ぶ運搬者です。大規模のレストランではこの役割はありますが、小さめのレストランではサーバーが兼任します。
【求められる能力】
- スピーディーな最初のドリンク提供
- 腕や指を駆使した配膳テクニック
- トレイを持つ腕の力
- 熱い汁がかかっても指を離さない根性
サーバーとしては最初のドリンク注文を取ってからテーブルに運ぶまでの時間がもっとも気を使う時間です。
お客さんは喉が渇いているかもしれないし、レストランにお腹が空いて来ているのだから、テーブルの上に何もない状況が長く続くとイライラしやすいんです。
高級店になればなるほど、ドリンクや最初のフードが出るまでの時間にマネージャーも気を使います。忙しいときにはマネージャーもドリンクを運びます。
フードが先に出ないように気を使ったり、テーブルに置ける料理の量を考えて提供するようにします。
団体ではトレイに何人分のグラスやお皿が乗るのか、一度にどれくらい自分は運ぶ能力を持っているのかを知ってると配膳が効率化できて役に立ちますよ。
わたしが働いたところでは、ドリンクランナーとフードランナーは基本的にでき上がったものを冷めたり溶かしたりしないうちに、素早くテーブルへ運ぶことがメインでした。
ただ、うどんの汁で熱くなった陶器のボウルや鉄板焼きのプレートからこぼれる熱々の汁がかかることも・・・。
手を離して落としてしまうと作り直しになるので、毎回熱さを堪えるのに必死でした。
ホスト
店頭での予約管理や電話案内、席案内を行う人です。全体的に女性が多く、ホステスとも呼びます。
【求められる能力】
- 全体の状況を把握する力
- その場での瞬時な決断力
- パズルのピースを埋める空間把握能力
- 苦情にも対応できる高い顧客対応能力
レストランに入って最初に挨拶をする従業員はほとんどの場合ホストでしょう。
あまり店内業務には携わらず、受付の顔として予約管理や席案内をします。
着席しているお客さんの状況や様子を把握して、サーバーへの負担が少なくなるようなお客さんの席配置を考えます。
予約のキャンセルや変更が生じたときには他の予約と入れ替えたりするので、パズルのピースを埋めるような思考力と空間把握能力が不可欠です。
来店するお客さんの中には最初から不機嫌な人や想定より長い待ち時間に不満をこぼす人もいます。
そんなときもお客さんに屈しない平等かつ丁寧なクレーム対応能力も必要とされるので、マネージャーがオーナーがこのポジションにいるお店も少なくありません。
バーテンダー
ドリンク作成の担当者。
【求められる能力】
- お客さんの嗜好に臨機応変に対応する力
- 目の前のお客さんオーダーの優先順位の見極め
- 業務を分担して依頼できる人格
- カクテルのレシピ
その名の通り主にはドリンクの作成ですが、お店によってはバーカウンターがあってフード注文も取ることもあります。
外国からの旅行者に異国のレシピを言われることもあるので、基本的なカクテルのレシピと検索手段を用意しておくことは必須です。
カナダではレストランの席を待つ間にバーカウンターや待ちスペースで飲みながら待つこともできるんです。
お店のピークの時間帯になると、バーテンダーは目の前のお客さんから注文は依頼されるし横のドリンクオーダーシートからは永遠とドリンクが打ち込まれる・・・
そんなときにグラスを割ってしまって氷を全部取り替えなきゃいけなくなる・・・
なんて冗談みたいなことも当たり前に起こり得ます。
大体が少人数でこなしているポジションなので、一人でこなすのが無理なときには、キッチンの人に氷を持ってきてもらえるように頼んだりマネージャーにサポートをお願いしたりと、助けてもらいやすい人格がある人が適していると個人的に思います。
スーパーバイザー
レストランでの現場責任者です。マネージャーとも言いますが、大抵お店に2人以上いることが多いです。
お店にもよりますがフロントに外国人が多い日本食レストランではフロント側(外国人をまとめる)とキッチン側(日本人をまとめる)それぞれにスーパーバイザーがいる店もあります。
【求められる能力】
- チームのモチベーション維持とリーダーシップ
- タイムマネジメントと組織力
- 問題解決能力と筋の通った決断力
- 圧倒的なストレス耐性能力
毎月の従業員のシフト作成や、在庫の発注業務。イベント対応や新メニュー考案、お客さんからの各種問い合わせ対応とムチャクチャ多忙な業務をこなしてます。
オーナーに代わって決定権を持つことや、ときには全従業員の責任を負うこともあります。
カナダではこれらの能力があっても割に合わないと思う人もいて、敢えてここに着かない人もいるほどプレッシャーは大きいポジションです。
ちなみに飲食店のフロント業務で就労ビザがもらえる可能性が高いのはこのポジションのみ。
そりゃカナダだってカナダ人を雇用してもらいたいので、専門的な職ではないフロントポジションは基本的に国民で補ってねって話です。
ただこの大変な環境ではあるものの、経験も積めますし英語も凄く上達するでしょうね。(むしろ英語できないとできないと思いますが・・・)
わたしが出会ったスーパーバイザーたちは、ツーリズムの勉強やマネジメント経験、ホテル業務を経験した人やサーバー経験から積み上げてお店の状況が把握できると認められてこのポジションについていました。
レストランのフロント業務で英語力は必要か
語学力よりも必要なこと
忙しい店になればなるほど、営業中はまさに戦場です。
とくにフロント業務は要求される英語力の違いはあれど、どのポジションもある程度の英語力が必要。
唯一バッサーは語学力よりも迅速なアクションが求められるポジションなので、英語力に自信がない人でもチャレンジしやすいと思います。
わたしは最初、たまり醤油がなまった "Tomari" がわからなかったり、間違ったわさびの発音 "Wasami" で混乱したりもしていました。
でもこれも慣れたらわかってきます。
レストラン勤務経験がある人でも、場所によっては日本食レストランでもサーバーになるのはなかなか大変。
語学力以上に、カスタマイズオーダーやアレルギーへの対応、慣れない料理への説明方法というような日本ではあまり見られない海外の当たり前のオーダーに対応できる力が求められるからです。
働き始めた頃、お客さんにたずねられた衝撃的な質問の1つ。
"うなぎ(eel)ってどんな味?"
・・・!
まだカナダに来たばかりだったわたしにとって、当たり前のものがお客さんにはわからないというのは衝撃でした。
カナダ人の同僚にあなたならなんて言う?って聞いたら、Grilled eel with Japanese BBQ sweet sauce かな〜って言われたときに、なるほど・・・!と本当に目から鱗でした!
フロント業務じゃなくても英語は使う
英語を使いたい学びたいからフロント業務がいいです!と思っている方。
お店のスタイルや状況によっては、実はキッチンでも同じくらい英語環境は作れます。
ポイントはコミュニケーションをする時間がどれくらいあるポジションかということだと思います。
バッサーで採用された場合、忙しくてサーバーやお客さんと会話したりする暇もなく黙々と仕事に取り組むことが多いので、実際英語を聞いてる余裕すらなかったりもします。
逆にキッチンではピークを超えたらサーバーが戻ってきてリラックスした会話をしたり、日本人よりローカル従業員が多いレストランだとそもそも全ての会話が英語だったりと状況が違うことも大いにあります。
日本人しかいないレストランは海外にいればほとんどないと思うので、自分の意識と環境の作り方で英語を使えるかどうかは変わってきます。
だからフロントでもキッチンでも、自分に合った、自分の好きな環境で楽しく働けるようにするのが一番だと思ってます。
まとめ
いかがでしたか?
わたしはカナダのレストランフロント業務はスーパーバイザー以外は全て経験しましたが、それぞれのポジションや求められる力の違いは日本と違って勉強になりました。
海外で楽しく働けて、友達ができて、英語も上達する。
こんなにもいろんな環境やポジションがあるんですから、自分に合った働き方を見つけて、海外での経験を身のあるものにしていきましょう!