こんにちは、カナダで猟銃がある家に住んでいる Yuki です。
ケベックでは秋の気候になり、ハンティングシーズンが始まりました。
広大な自然が広がるカナダ。特にケベックではハンティングはアメリカや海外からたくさんの人が訪れるほど州の一大産業として経済を支えています。
我が家では、カナダ人の夫はハンティングやフィッシングなどの野外生物を専門に勉強する学校を卒業しその関係に就職していることもあり、家の中に猟銃が保管されています。
今回、規制がありながらも銃が身近にある北米では、ハンティングはどのように行われているのか、安全管理や環境についてはどう考えられているのかをご紹介します。
カナダで日本と違う銃環境を不安に思う方、海外では銃と命の関わりはどう教えられているのか気になる方の悩みを解決するヒントになればと思っています。
ここではカナダ・ケベック州でのハンティング基礎知識を述べているので、他の州では状況が異なることをご理解ください。
ハンティングのシーズンは?
毎年秋が始まる9月中旬から3月末で、2018年は9月15日から翌年の3月31日までの約半年です。
夏の釣りシーズンの終わりとともにハンティングシーズンが始まるので、アウトドア好きが集まる地域では一気に山へと男たちの気持ちが切り替わります。
ハンティングのエリアによっては、後半の時期になると狩られ尽くしてお目当ての動物が見つかりにくくなり、動物にも知恵がついてハントにより高い技術が求められるようになるそうで。
特にムース(ヘラジカ)狩りの時期は秋の2〜3週間に限られるのですが、巨大であること、野生でしか食べられないこと、また1年分の食糧にも値することから憧れのハント対象になっています。
ケベック州での銃の取り扱い
ケベックでは銃の所持はもちろん、ハンティングはライセンスを取得した人しか行えません。
猟銃用のライフルかショットガンの持ち運びにも資格は必要です。
BC州ではあまり見ることがなかったのですが、ケベック州では一般のホームセンターで当たり前のように釣り製品の隣に銃が売られているのには驚きました。
もしかしたらアルバータ州など別の州でも同じように売られているのでしょうか……。
ハンティングは銃以外にも弓やボーガン、罠(トラップ)で行われますが、すべてがずらりと並んで販売されているのは今でも物珍しく感じてしまいます。
銃ハンティングの三種の神器、必要な3つの資格
ハンティングコース修了ライセンス:Initiation to Hunting with Firearms
これがすべての基本になります。2日間のコースで狩りの正しい知識や動物の生態系、銃の扱いのルールや模擬演習を行います。
それぞれの日の修了ごとに選択式の筆記テストがあり、これらの試験に合格して証書を得られます。
夫は1日目に最後のページに回答してなかったのですが、2日目のテスト終了時に教えてもらいラッキーにもその場で前日の問題を解かせてくれたそうです。
銃火器安全ライセンス:Canadian Firearms Safety Course
こちらは銃の所持と持ち運びの証書で5年毎に更新になりますが、そもそも取得するにはハンティングコース修了ライセンスが必要です。
居住者は12歳以上から(17歳までは銃の種類に制限あり)取得することができますが、保持してなくても有資格者が近くにいる条件であればこの証書はなくても狩に行くことは可能です。
シーズン別ハンティングライセンス
居住者、非居住者関係なく、全員が必要なライセンスです。
紙切れ1枚でコンビニで購入できるのがなんだか気軽すぎて驚きを隠せません。
毎年9月中旬から3月31日までの間有効なハンティングライセンスで、狩る動物の種類や場所によってライセンスの種類が異なります。
ただ、居住者と非居住者では費用が最大約6倍違うものも......!
2018年の料金はこちらに記載されているようですが、年によっては料金が変わることもあるそうです。
夫は現時点でスモール・ゲーム(名前がゲームって……)とムースを保持していて、スモールゲームのライセンスではウサギやアライグマ、カモやライチョウなどが対象となります。
紙切れ1枚で、しかもコンビニで購入できるのが気軽すぎてそれだけケベック州では浸透しているものだと思わせてくれます。
非居住者が必要なライセンス
で、カナダに居住していない人も同じ資格が必要なのか?
と思って調べて見たのですが......。いまいち詳細な情報にたどりつけず。
わかっているのは、シーズン別ハンティングライセンスは必須で残りは特別ルールが適用されすべての資格が必要ではないようです。
いずれにせよ、非居住者でハンティングをしたい方はガイド付きで行くと思うのでそちらの方に相談するのが確実です。
狩りに必要なものは多くはない
大物のハンティングにはたくさんの持ち物が必要ですが、本当に必要なものは限られます。
- 銃
- オレンジジャケット
- ライセンス
オレンジジャケットは義務付けられていて、ケベックではハンティングできるエリアは限られているとはいえ事故を避けるためにもルールは絶対厳守です。
さらに、動物の種類によっては人間の匂いに敏感な動物もいるため、狩りの前日には特別な石鹸で体を洗い前日から準備します。
とはいえ、どんなに準備万端でも大物は仕留めるのに1週間やそれ以上かかる場合もあるそうで。
根気と忍耐も要するのがケベックのハンティングです。
環境保全という視点
狩りの対象は環境保全と生態系のバランスによっても左右されます。
カナダではカリブーの数が減少していることから去年から無期限で停止になっていますし、ムースは有ライセンス者2人に対して1頭までと制限されています。
ケベック州ではハンティングを21ゾーンに分けていて、生態状況によってハンティングの期間や性別が異なります。
今年夫が行く予定のガスペジ地域(Zone2)ではムース(ヘラジカ)のハンティングは大人の雄と子供が対象になっているそうで。
仮にムースを仕留めることができたら、ライセンスに付属しているタグを2人分付随させ(大きすぎてすぐに動かせないため)、動かした後には州にハンティングの日時、場所、名前などを報告する義務が発生します。
ライセンスがあるからいくらでも狩っていいわけではなく、環境バランスを国として管理する情報源の1つになっているわけです。
命を狩るからこそ考えること
個人的な見解になりますが、今まで目の前で命がなくなる経験をしたことがないわたしは、ハンティングに対して賛成とも反対とも言えない気持ちを持っています。
ライセンスを持つ夫にどんな気持ちでハンティングに挑むのか聞いてみたら、
- 自分の食べているものがどこから来ているのかはっきりとわかること
- 少しでも添加物がなくヘルシーな食べ物を食卓に運ぶこと
- 無駄にすることなく命に感謝することを学べること
- 自然の中に身を置き、人間も自然の一部だと知ること
そんな理由でその動物と向き合っていると話してくれました。
という夫も、実はまだひとつも仕留めたことはありません。
彼自身も、仕留めた後も同じ考えで居られるかどうかはまだわからないとそうです。
まとめ
ハンティングの結果わたしたちの食卓へ野生の肉が並び、「食」のルーツを目の前にしてみたときにどう考えるのか、まだ自分たちで目の当たりにしたことがない私たちははっきりとわかりません。
それでも、今できることで自然と向き合って、毎日の食事に感謝することは忘れないでいようと思います。
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